大会長ご挨拶



この度、平成29年7月2日(日)に開催されます第29回大阪府理学療法学術大会の大会長を務めさせていただくことになりました。大阪府士会は50周年を過ぎ、新たな第1歩を踏み出そうとしています。このような時期に、本学術大会を担当させていただくことを誠に光栄に思い、厚く感謝申し上げます。

本学術大会のテーマは「理学療法Outcome measureの再考~理学療法に求められる‟質”~」といたしました。今後日本は、総人口に占める高齢者の割合を高めながら、人口は減少していくと予測されます。そして人口減少社会の本格的な到来によって、日本の医療は新たな課題に直面することも予測されます。そのような背景を踏まえ、厚生労働省は「保健医療2035」を発表し、これまでの日本の医療体制であった「多くの病床」「多数の従事者」と「提供する量」をもって充足度を評価する側面から、「限られた資源の中でいかに良質な医療サービスを提供し課題解決を行っていくか」へと変換していきます。さらに、行政が外から規制するのではなく、プロフェッショナリズムを背景とした医療者集団の、自律的なコントロールを拡げていく視点も提示しています。また、人口の減少は大都市と地方都市との地域差も生じるため、地域ごとの対策が不可欠となります。現在、高齢者の保健医療福祉においては、地域包括ケアシステムの構築が急がれているところではありますが、それ以外の対象者に対しても地域で対応していける医療連携が課題になると思われます。

リハビリテーション医療においては、これまで回復期病棟に多くのセラピストを投入し、多くの医療サービスを提供してきましたが、診療報酬改定でも明らかなように理学療法実施時間に対する評価ではなく、改善度に対する評価が重要視されることになりました。まさに「量から質」へのパラダイムシフトであり、診療報酬における理学療法による改善度、すなわち‟質”の評価尺度はADLの自立度となります。しかし昨今の理学療法は機能分化が進み、急性期・回復期・生活期で別々の目標設定が成され、機能障害・活動制限・参加制約を偏りなく統合して評価できないまま、終了してしまっていることも多いのではないでしょうか。

そこで本学術大会では、本来のリハビリテーションの目標となる障がい者の生活の質の向上を達成するために、理学療法が目指すべきOutcomeは何かを再考したい。また、サブタイトルを‟理学療法に求められる質”とし、理学療法にとっての高い質とはどうあるべきなのかを、職種間連携も含めて各分野でご活躍の先生方にご講演いただき、参加者全員で考えていく機会にしたいと考えております。

本大会が、今後の新しい理学療法のあり方を学ぶ機会になることを願うとともに、多くの会員ならびに関連職種の方々のご参加を心からお待ち申し上げます。

第29回大阪府理学療法学術大会
大会長     田中 錦三
(清恵会第二医療専門学院)