基 調 講 演 | ||||||||||
『理学療法の臨床・教育・研究を支援する工学』 第19回大阪府理学療法学術大会
近年、工学(engineering)の概念は「役に立つ生産物を得るために、計画・設計・製造・検査の段階に基礎的科学を応用する技術の総称 (岩波国語辞典 第6版)」として広がり、工業に限らず用いられるようになってきました。われわれの周囲でも臨床工学や教育工学といった言葉や概念がごく一般的に使われています。そこで理学療法の臨床、研究、教育における問題解決のために、様々な学問領域の基礎的な知見を大胆に活用することを提唱したいと思います。 |
特 別 講 演 1 |
『筋音図の基礎と臨床応用』 大阪電気通信大学・医療福祉工学部・理学療法学科 筋線維は運動神経からの刺激を受けて活動電位を発生し、収縮することで張力を発生する。この電気的活動から機械的活動への一連の反応は興奮収縮連関と呼ばれる。多数の筋線維の収縮によって生じた張力は腱で一つに統合され、運動を遂行する駆動力いわゆる筋力となる。体表面上から導出した筋電図(表面筋電図)は多数の筋線維は発生させた活動電位の重畳であり、筋の電気的活動を反映することは周知のところである。一方、近年、筋の機械的活動と関連した筋音が広く注目されるようになった。筋音図(Mechanomyogram:MMG)とは、筋線維が収縮する際にその径が側方に向けて拡大・変形する結果発生する振動成分を起源とする信号である。本信号は小型加速度計などのトランスデュサによって体表面上より導出され、筋線維の機械的活動(収縮)の総和を反映する。すなわち、筋音は活動電位から筋力に至るまでの中間に位置する信号であり、筋収縮に関する機能情報を筋線維レベルで提供し得る信号として注目されてきた。 筋収縮に起因する振動現象の用語は、当初、聴診器等を用いて捉えられたことから、「音」としての意味合いの強い acoustic myogram (AMG)、phonomyogram (PMG)、sound myogram (SMG)、muscle sound、muscular sound (SM)などの用語が使用されていた。さらにその後、機械的現象であることを表すためにaccelerometermyogram (AMG)、vibromyogram (VMG)なども用いられた。現在、この用語はOrizioが提案したmechnomyogram (MMG)に統一されつつある。一方、日本語では著者らが「筋音図」を提案したために、現在ではこれが一般に使用されている。 筋音図が発揮筋力の大きさによって変化することは、すでに200年前Wollastonが指を耳に入れて筋音を聴取する簡単な実験によって示唆している。その後、多くの研究者によって筋音図の振幅と随意収縮力との関係が、さまざまな筋を対象として詳細に調べられてきた。そこでは、筋音図振幅は収縮力にともない指数関数的に増大し、高収縮力においては振幅が減少することが示された。これら随意収縮力と筋音図との関係は、追従する誘発筋音図の研究により明らかにされる。 誘発筋音図の研究で特に重要な知見は、第1に筋線維タイプによって誘発筋音図の波形と振幅が明確に異なることである。第2に刺激頻度の増加にともなって筋音図波形が融合し振幅が減少することである。第3は刺激強度の増大、すなわち、動員される筋線維数の増加にともない筋音図振幅は漸増する。したがって、随意収縮で観察された筋音図振幅−力関係は、運動単位動員による振幅の増大(特に速筋線維の動員は振幅を急増)と、高収縮力における強縮に起因した振幅の減少と理解される。これら筋音図と収縮力との関係は、筋自体の収縮特性のみならず、神経系による力調節機構の解析にも利用可能である。さらに、上述した誘発筋音図の特徴はさまざまな臨床検査に応用されつつある。本講演ではこれら筋音図の基礎的な解析と、臨床応用への可能性について紹介する。 |
特 別 講 演 2 | ||
『医療・保健・福祉を支援する工学』 大阪電気通信大学・医療福祉工学部・理学療法学科 1.はじめに
医療・保健・福祉を支援する工学としては、大きく3つに分けられる。すなわち、(1)生体から有意な情報を計測する技術、(2)生体に物理的エネルギーを与えて、治療効果を維持・促進するための技術、(3)医療従事者や患者の肉体的・精神的負担を軽減するのに役立つ技術である。以下それぞれについて簡単に説明する。 2.生体から有意な情報を計測する技術 3.生体に物理的エネルギーを与えて、治療効果を維持・促進するための技術 4.医療従事者や患者の肉体的・精神的負担を軽減するのに役立つ技術
3.まとめ |