大 会 趣 意 書

理 学 療 法 の 再 構 築
〜 新健康フロンティア戦略への参画 〜


第48回 近畿理学療法学術大会
大会長  西村  敦

 日本は世界一の長寿を享受しており、その点で日本の医療は諸外国の模範と言われています。しかし、右肩あがりの経済成長も終わり、年齢別人口構成比率からみる少子高齢化も今後半世紀は続き、2055年には高齢化率が40.5%になると推計されています。高齢者増加に伴う医療費の増加は必定でありその意味では自然増であると言う前提に立っても、少子化による就労人口の減少などに関連してその医療費をどう工面するかについては計画的な対策が早急に望まれています。
 一方、その医療のあり方についても、コスト(cost)、アクセス(access)、そして、そのクオリティー(quality)の側面で既成概念を取り払った関係者の真剣な検討が望まれています。その大きなひとつの結果が、内閣官房長官主宰の新健康フロンティア戦略賢人会議が2007年4月18日に取りまとめた新健康フロンティア戦略にあります。この趣旨は予防を重視した健康づくりを国民運動として展開することにあり、家庭の役割の見直しや地域コミュニティの強化などを柱にしています。そして取組んでいくべき分野として、「子どもの健康」、「女性の健康」、「メタボリックシンドローム克服」、「がん克服」、「こころの健康」、「介護予防」、「歯の健康」、「食育」、「運動・スポーツ」の9つの分野を上げ、それぞれの分野で対策を進めていくことを提唱しています。
 その戦略の中には私たち理学療法士も今後果たすべき責任があります。「介護予防」において高齢化に伴う身体能力低下を防ぐことは理学療法の本来の役割であり積極的な関与が望まれます。しかし、そのリーズナブルなアクセスを確保する上で家庭や地域などの対象者により身近なところに拠点を持てる施策が早急に望まれます。「メタボリックシンドローム克服」、「運動・スポーツ」の分野でも、老化や様々な既往歴に伴う運動能力低下を持っている対象者も多数存在すると考えられ、日常生活活動、日常運動、日常スポーツの指導において個人の運動機能に応じたテーラーメイド指導が求められており、それこそ理学療法士の専門性が発揮できる分野と考えられます。「子どもの健康」、「女性の健康」の分野においても同じ役割があり、「がん克服」については既に諸外国では終末期医療への理学療法による参加は行われており、今後それをわが国において推進するために何が必要かについて具体的に議論しなくてはならない時期にきています。
 2008年、日本の医療、介護、そして年金は想定外の問題も含め私たちに大きな不安を抱かせています。国民の健康と福祉を担う専門職として、医療、介護、福祉、健康にどう関わっていくべきか、私たちが社会へ提案し貢献できることを明確にすることが大切だと思っています。新健康フロンティア戦略への理学療法士の参画をより具体的にするための契機として、今回の学術大会を企画致しました。今までも時代の要請に応えてきた理学療法のように、今後の要請にも的確に応えられる理学療法に再構築したいと思います。
 


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