※このページ記載の研修会は全て終了しています。

第8回障害児保健福祉部ミニ研修会の報告

障害児保健福祉部 部員 西村 晶子

平成15年8月30日(土)午後2時30分から午後5時まで南大阪療育園にて第8回障害児保健福祉部ミニ研修会を開催し, 昨年度大変盛況であった小児理学療法症例検討会を引き続き行ないました。他府県からの5名、他職種3名を含む48名が参加し、前半・後半それぞれ4グループに分かれ、ビデオテープによる発表症例を基に各セラピストが日頃の経験と知識を共有する場となりました。
参加者のアンケートでは「他のPTの意見が聞け,今後の子どもたちへの取り組みへの参考となった」、「同じ悩みを持つPTがいるということが心強く思えた」、「他施設のPTの意見を聞くことができて勉強になった」、「症例検討会を通して症例の見方,治療の考え方をもう1度考え直す機会となってよかった」「普段自分が見落としている点に気づく機会になった」などの声が聞かれました。また小児理学療法の治療手技等勉強会の企画を求める声や次回の症例検討会の開催を希望される意見をたくさんいただきました。
来年度以降もミニ研修会を開催し、発達障害児にかかわる理学療法士の間での交流を深めながら、子どもたちがよりよい生活を送れるような理学療法治療を提供していきたいという思いを強くしました。
今後も障害児保健福祉部の活動への皆様のご意見とご支援をよろしくお願い申し上げます。

第7回障害児保健福祉部ミニ研修会の報告

障害児保健福祉部部長 藪中良彦

平成14年11月30日(土)午後2時30分から午後5時まで南大阪療育園にて第7回障害児保健福祉部ミニ研修会を開催し、小児理学療法症例検討会と子どもに関わる理学療法士の交流会を実施しました。他府県からの参加者9名を含め68名の参加者があり、非常に盛況でした。参加者は5つのグループに別れ、グループごとにビデオ映像を使い1症例の症例検討をおこないました。参加者のアンケートでは、「いろいろな理学療法士の意見を聞くことができ、とても勉強になった」、「治療目標設定の考え方について学ぶことが多かった」、「他の病院・施設での取り組みを知ることができ、大変勉強になった」、「他府県ですが情報が少ないため、また参加させてください」、「交流会でざっくばらんに色々な人とお話できて良かった」など次回のミニ研修会の開催を希望される意見をたくさん頂きました。来年度以降もミニ研修会を開催し、子どもに関わる理学療法士の間で学びあい皆で協力しながら、子どもたちにより良い理学療法治療を提供していこうという思いを強くしました。
今年も、障害児保健福祉部の活動への皆様のご意見とご支援を宜しくお願い申し上げます。

第6回障害児保健福祉部ミニ研修会の報告

南大阪療育園 榎勢道彦

2002年6月8日(土)、第6回障害児保健福祉部ミニ研修会が南大阪療育園において行われました。今回は、「理学療法士との連携を考える」ということを旨に、大阪府作業療法士会副会長の茂原直子先生から「発達障害児の作業療法の紹介」という内容で講演していただきました。参加には理学療法士、作業療法士の50名ほどがありました。
内容は、幼児期から就学準備期、学童期にわたる各年代の作業療法について、症例を通 して講演していただきました。この中で、発達障害児に対する作業療法では、日常生活活動課題を通 じて評価・治療をおこなうことが重要で、課題を学習するためには年齢に応じた時期やタイミングがあることを強調されていました。また、子どもが能動的に課題を学習するために「楽しみ」となる課題の達成を連続させることや、変形・拘縮などの二次障害に対する医療的管理についても、教育プログラムを基盤とした長期的なプログラムが必要であるということを提案されていました。
参加された方からは「実際の子どもさんを通した内容だったので、年齢や課題の治療的意義と工夫されたところの関連性がよく分かった。」ということや、「子どもさんの発達を考える上で、運動や姿勢といった部分だけでなく、広い意味での発達、学習や適応についての興味深い内容だった。」などの意見・感想がありました。
今回の研修会では、小児リハビリテーションにおける作業療法士の役割や専門性をよく知る機会となり、よりよいチームアプローチを実践していく上での指針になったのではないかと感じています。また次回の研修会では、「症例検討会」を予定しています。理学療法士、作業療法士や他の職種の方々とディスカッションを行い、地域間、職種間の連携を深める場になればと思っています。

第5回障害児保健福祉部ミニ研修会・報告

泉佐野市心身障害児通園施設木馬園
日置 多美

第5回障害児健康福祉部のミニ研修会が、平成13年11月10日(土)の午後2時から5 時まで南大阪療育園にて開催されました。当日は、障害児に携わる病院、施設等から、約40名の参加がありました。
今回の研修会では、前回までのテーマと異なり、「小児理学療法の評価」ということで、 南大阪療育園の薮中良彦氏に「小児理学療法評価概論」についてお話していただき、その 後、南大阪療育園の鶴田ゆかり、西野紀子両氏に「Gross Motor Function Measure(GMFM)」 と「Pediatric Evaluation of Disability Inventory(PEDl)」の紹介をしていただきました。まず、運動機能に関係する基本的な理学療法評価項目について簡単に説明していただいた後、実際の評価として、2つの方法を、ビデオ等を交えながら具体的にわかりやすくお話していただけ、とても有意義な研修になったと思います。
前回までの「NICUから成人まで、Life Spanで障害児の治療を考える」というテーマの 中で、1人のセラピストが、生涯にわたって1人の子どもに関わっていくことは難しく、 各施設間での連携の必要性を痛感した者としては、このような標準化された評価方法が広く普及することが、そういった観点からも必要なのではないかと思いました。参加者の方々からは「親御さんと理学療法の方向を共有し、変化を見るのに良い」「今後、これらの実技等も行ってほしい」「府下のネットワークを念頭において患者さんを紹介しあう時のフォーマットが作られれば」等の意見がありました。
今後は、これらの評価方法の中で、自分の施設でも取り入れられそうなところを吟味し、 うまく利用していけたらと考えています。

第4回障害児保健福祉部ミニ研修会関連・学会発表

障害児保健福祉部は、第4回障害児保健福祉部ミニ研修会の内容をまとめ、第13回大阪府理学療法士学会にて、以下のポスター発表を行ないました。

演題名:サービス利用者からの小児理学療法への提言
~Life span で障害児の治療を考える~
発表者: 障害児保健福祉部
(麻生川真里・藪中良彦・西脇美佐子・榎勢道彦・川上知子・白崎義之・日置多美・松岡知恵子)

はじめに

大阪府理学療法士会障害児保健福祉部は、2000年度より大阪府下の小児理学療法士のネットワーク作りと資質向上を目的にミニ研修会を開催している。 2001年6月30日には「幼児期から成人まで、Life spanで障害児の治療を考える 第3段:サービス利用者からの小児理学療法への提言」というテーマで第4回障害児保健福祉部ミニ研修会を開催した。当日は一般病院・肢体不自由児施設・通園施設・養護学校など多種多様な所から障害児(者)の理学療法に関わる約50名の参加があった。今回はその第4回ミニ研修会の内容をまとめ、若干の考察を加えて報告する 。

方法

1.大阪府下の小児関連施設8施設で理学療法を受けている障害児(者)またはその御家族に対し、紙面によるアンケート調査を行った。その結果、御本人13名、御家族44名から回答が得られた。アンケートの項目は以下の5項目であった。
(1) 最初に理学療法を受けられた時の印象はいかがでしたか?(御家族のみ)
(2) 理学療法を受けて良かったことを教えて下さい。
(3) 理学療法に関してご不満に思われることを教えて下さい。
(4) 理学療法に関して期待することまたは希望することを教えて下さい。
(5) 理学療法士に提供してもらいたい情報にはどんなものがあるのか教えて下さい。
2.上記のアンケート結果を基に第4回ミニ研修会を実施し、そこで御本人3名と御家族(母親)2名からアンケート項目を中心とした御自身の経験についてお話していただいた。また障害児(者)の理学療法に携わる参加者53名とともにディスカッションを行った。
3.研修会終了後、参加者には今回の研修会に対する感想アンケートに回答していただいた。

結果

御家族

1.最初に理学療法を受けられたときの印象
(1)障害受容に関すること
・障害受容ができていなかったのに将来像を断定的に言われショックだった。
・もっときちっと将来像の説明をしてほしかった。
・我が子の障害受容する際の大きな存在だった。
・PTを受けて具体的に今後(将来)どうなるとか、そういうことはまだわからなかったが、ただただPTを受けるだけで心が救われた。
(2)理学療法士とのコミュニケーションに関すること
・どうしてそのようなことをされているのか理解しにくく、それをどのように質問したらいいのかもわからずとまどった。
・何がなんだかわからないまま始まったという感じで主旨も方向性も見えずに不安だけが先行していた。
・専門用語でなくわかりやすく教えてもいらえたのがうれしかった。
・専門的な意見が聞けるのでよかった。
・全く何も理解できない親に、非常にソフトに日常生活での具体的な介助方法(抱き方・寝返り方法)を教えてもらい、必要性を痛感した。
(3)子供への接し方に関すること
・泣き続ける子供を見るのは親としては辛かった。
・眠っていたり、泣き続けたりこれで本当に訓練になるのかと思った。
・子供が慣れるまでゆっくり待ってくれたのがよかった。
・子供のその日の状態に対応してもらえて親とも話をしながら進めていってもらえてよかった。
・子供を遊ばせながら楽しくリハビリすることを教えてもらった。
2.理学療法を受けてよかったこと
(1)子供に関すること
・子供の機能が向上した。
・少しずつ自分なりに訓練のことを理解し、自分の意志で体を動かすことを覚えはじめた。
・PTのアドバイスを日常生活に取り入れることで、たとえ障害の重い我が子でも「自分が出来た」という喜びを感じさせてあげることにつながった。
・マイナス評価でなくプラス評価してもらえたことがよかった。
(2)御両親へのサポートに関すること
・日常生活の介助などを教えてもらえた。(困ったことなども気軽に相談できた。)
・子供の身体についてよく知ることができた。
・つまずきながらでも子供の成長を見ていくことができた。
・親と一緒に成長を見届け治療を進めていけた。
・親としての思いを聞いてもらい精神的に支えられた。
3.理学療法に関する不満
(1)治療内容に関すること
・子供を総合的に捉えた上で理解してほしい。
・もっとADLに合った治療をしてほしい。
・声かけや歌などでもっとリラックスさせてほしい。
(2)治療体制(頻度・形態など)に関すること
・通院できる体ではないので在宅で治療してほしい。
・家の近くでPTを受けたい。
・成人になると治療頻度が減少する。
・継続的に治療してほしい。
(3)インフォームド・コンセントに関すること
・現在の状況に対しての計画をしっかり伝えてほしい。
・装具についての詳しい説明をしてほしい。
(4)チームアプローチに関すること
・医師、セラピスト、家族との三者で疎通しあえるようなことを望みます。
・二次障害が生じたことに対して、自分を責める母親が多いことには、医療従事者の責任もあるのでは・・・。
4.理学療法治療に関する期待又は希望
(1)治療内容に関すること
・日常生活や家庭環境にそくした治療。
・親がかわって訓練できるように細かいところまで教えてほしい。
・大きくなっても拘縮や骨のゆがみを防止できれば良いなと思う。
・治療中に受ける側が不安になるような言動だけはやめてほしい。
・熱心に訓練する姿勢、熱意。
(2)治療体制(頻度・形態など)に関すること
・学校生活を充実させながら、もう少し近くで訓練の回数を増やせたらと思う。
・養護学校にPT・OTが常勤していると安心できる。
・学校生活に対して学校側へのアドバイスをもっともらえるといいと思う。
・年間通して訓練してほしい。
・生涯を通して治療を受けられること、必要に応じて保証されること。
(3)御両親へのサポートに関すること
・不安な親に共感する心。
・医師とのチームワークの中で子供がよりよい生活を過ごせるような取り組みを望む。
・なるべくたくさんの先生の意見も聞いてみたい。
・治療に関する説明や家庭でのリハビリの仕方などをわかりやすく資料を提供してほしい。
5.理学療法士に提供してもらいたい情報
・子供が将来どうなるのか。
・子供が喜び遊びながらできる簡単なリハビリについて。
・同じ障害を持った子供の家族のグループについて。
・日常生活に役立つ福祉機器や装具について。
・福祉、作業所、学校について。
・医療機関との連携、紹介。

ご本人

1.理学療法治療を受けてよかったこと
・身体の現状維持に役立っている。
・痛みが和らいだ、体が動きやすくなった。
・ADLがとりあえずできるようになった。
・体験的に理学療法は体の機能回復を図るための手段に思える。
・PTを受けて良かったという実感ははっきりいってない。学校生活などを一生懸命やってきたことが良かったと思っている。
2.理学療法治療に関する不満
(1)治療内容に関すること
・「やられて嫌や」、「なんでこんなことされなあかんの?」と思っていた。
・小さい頃STでピンポン球を吹きあって何が楽しいと思っていたけど親の目を気にして気をつかっていた。
・やった方が良いのはわかっているが、できないことを指導される。
・「ゆっくり歩け」と言われるが日常生活では難しい。(踏み切りや信号など)
・「感覚」で教えないで治療の意図や説明をきちんとしてほしい。
・部分でなく全身を通して診てほしい。
・「生きる幅」を広げることをサポートするPTであってほしい。
・「歩くこと」を最終目的にしたようなPTの為のPTをする人がいる。「歩くこと」は手段であって、歩くことにより生活の幅が広がる。
(2)治療体制(頻度・形態など)に関すること
・訓練の実施回数に制限がある。
・担当のPTが変わる。
(3)インフォームド・コンセントに関すること
・子どもの頃、どうしてこんなことをしないといけないのかわからず、ただただ訓練をやらされ嫌であった。
・生まれたときから障害を持っており、それが自分自身では普通のことであるので、「普通は・・・」、「力を抜いて・・・」とか「こういう風にしなければならない」と言われても、その普通の感覚がよくわからなかった。「普通」というものに違和感があった。
3.理学療法治療に関する期待又は希望
(1)チームアプローチに関すること
・PT間での情報交換も盛んにしてほしい。
・医師と連携し二次障害を予防する治療を行ってほしい。
(2)セラピストとのコミュニケーションに関すること
・リハビリ方法を家族や介護者に教えてほしい。
・治療について患者とセラピストが互いに話し合える時間が必要である。
4.理学療法士に提供してもらいたい情報
・自立に関する情報。
・家庭での生活の仕方や社会生活に役立つアドバイスがほしい。
・日常生活用具などに関する情報。
・理学療法に関する専門書があれば知りたい。

参加者

(1)御本人の方の率直な意見が聞けたこと。
・御家族の方、特に本人の方から意見を聞かせて頂いたことは貴重で、とても考えさせられることが多く有意義だった。
・PTのためのPTという言葉にドキッとさせられ、今後の治療または援助に役立たせていこうと思った。
(2)コミュニケーションに関すること。
・「ここをこうしたい」とか「こんな訓練をして欲しい」等、本人の要望をもっと話し合う事が大切だと感じた。
・家族の環境、性格も考慮してコミュニケーションを図っていきたい。
・母親や子供のパーソナリティーを変化させることは難しく、その母子に応じたサービス内容の提供とコミュニケーションにより意思疎通が重要である。
(3) PTの在り方に関すること。
・其々の自立の意味、それをサポートする多方面からのアプローチの連携の大切さを痛感した。
・「運動機能を日常生活につなげていけたのはPTのアプローチのおかげ」とおっしゃったお母さんの言葉が印象に残った。乳幼児期から継続してPTを受けられる環境の必要性を感じた。
・セラピストはどうしても技術、ハンドリングなどにとらわれがちだが、もっと生きる幅を広げるサポート役であればいいなと思った。
・「PTのためのPT」(自己満足)になることなく、御両親、御本人の立場に立って治療を進めていけるように努力していきたい。
・しっかりと自分の意見を持ち発言できる人はコミュニケーションも一つの手段であるが、お母さんなど自分の意見を代弁してくれる人のいない子供たちにとって、PTはどんな存在でいるべきなのか?どうしたらいいのか考えている。

考察

小児理学療法においては「早期療育」だけでなく障害を持つ子供の一生を通した「長期療育」の必要性が高い。このことから「生涯」にわたって「障害」をもつ子どもに関わる理学療法士にとってLife spanで障害児の治療を考えることが重要となる。そこで、御家族の意見や、実際に小児理学療法を受けられた方が成人になられたときの意見から、理学療法士の在り方・どのような存在でいるべきなのか考えてみたい。
まず、「最初に理学療法(以下PT)を受けた時の御両親の印象」から、初めてPTを受ける際に御両親が望まれる小児理学療法士像が浮かんでくる。(1) 何をやっているか、わかりやすい言葉で専門的意見を交えて説明できる、(2) 具体的な介助方法など日常生活にそったアドバイスができる、(3) 御家族の背景を考慮しつつ各々の御両親に応じて将来像を説明できる、(4) 同じような障害を持つ子どもの親の会の情報を紹介できる、という存在である。これらがうまくいけば障害受容する際の大きな存在となれるのであろうが、タイミングが狂うと障害受容過程を妨げてしまう可能性を持つ。それは御両親のアンケートで「障害受容ができていないのに将来像を断定的に言われてショックだった」という回答があったことから言える。Miller(1968)は御両親が障害児を受容する過程を、第一段階:ショックと混乱、現実の拒否、第二段階:現実への適応の努力を始める、第三段階:現実を認識し、現実に適切に対処できる、の三段階に分類している。御両親がこの三段階の過程を歩み、障害受容していくには理学療法士の役割が重要となるであろう。実際、空知恵巨ら(1997)によると、母親を支援してくれた人として夫や他の障害児をもつ母親に次いで理学療法士・作業療法士が挙げられていた。これは広瀬たい子ら(1989)の報告とも一致している。一方、空知恵巨ら(1997)は子育てがつらかったときの具体的な内容として「訓練がうまくいかない」などを含め子どもの健康や身体機能に関することが中心であったことを報告している。私たちのアンケート結果からも「眠ったり、泣き続けたり、これで訓練になるのかと思った」、「泣き続ける子どもを見るのはつらかった」という回答があった。理学療法士は障害受容に対して、大きな援助ができる可能性をもつと同時に、御家族にストレスを与えてしまう危険性もあると知る必要がある。このことをふまえて、御両親の支えとなりその後の治療を成功させていくためにも最初に御両親と関わる際、各々の関心の違いを読み取り的確に対応していくべきであると言える。
次に「PTを受けてよかったこと」に関しては、機能の向上を含めPTの専門性を生かした子どもへ のサポートや御両親に対しての支援が行えていることが示された。一方、「不満・期待」からは今後考 え直さなければいけない課題が提示され、自分たちの治療を発展させるために取り組んでいくべき事柄が明確に表された。1.スタッフ間あるいは施設間のコミュニケーションの向上、2.サービス利用者と理学療法士のディスカッション、3.現実の治療形態の改善である。治療形態においては「在宅治療をしてほしい」、「地域でも通えるところがほしい」などに多くの期待が寄せられている。これは現実に、経済的・体力的にも通院負担が御両親のストレスになりえることを示し、地域の病院や施設など色々な場所で小児理学療法が受けられることが求められている。
続いて当事者の理学療法に対する思いは御両親と少し違いがあった。御両親は子どもを治療に連れてくるだけである意味、安心し満足する事が多いのに対し、治療を受ける当事者はその治療が本当に自分にとって意味のあるものか非常にシビアに評価していた。それは子どもの頃、何のためかわからず嫌々親の目を気にしてPTを受けていたという話や、成人になられた方が「ADL」や「自立」に対して関心が高いことから明らかである。しかし現実は「PTのためのPTになっている」、「歩くことが最終目標になっている」、「ゆっくり歩けと言われるが現実場面では難しい」という指摘を理学療法士が受ける状況である。これらは自分自身の健康や障害そのものに対して自覚を持ち、自立した生活を目指す当事者の切実な声である。サービス利用者主体の治療となるためには、当事者と御家族と理学療法士がディスカッションし生活に沿った具体的な目標に共に立ち向かっていくことが望まれる。そこにはもちろん専門的な意見も必要であり、また現実的に「ここを一歩出ると社会」ということを考えた「生活の幅を広げる理学療法」が必要ではないだろうか。
参加者の感想には「PTのためのPT」という言葉にドキッさせられたと書かれた方が多かった。当然どのセラピストも「当事者主体」で治療を進めているつもりではあるだろうが、直接当事者から「理学療法士主体の治療である」と指摘されると考えさせられることがあったようである。また当事者や御家族の10年 20年を振り返った理学療法治療に対する率直な思いを聞く機会があまりなかったので、今後の治療をよりよく展開していくための課題をそれぞれ見いだす場となった。
今回のアンケートや研修会を通して印象深かったことは、やはり「PTのためのPTになっていないか」という指摘である。この言葉から「当事者及び御家族が主体のPT」となるには「生活の幅を広げるために、今どのような理学療法が必要か」と理学療法士は日々考えなければならないと感じた。
そのためには当事者や御家族の最大の関心事を聞くことが非常に重要となる。特に、自己表現することが難しい子どもの声に小児理学療法士は耳を傾けるべきである。

まとめ

1.小児理学療法治療のサービス利用者に対し、理学療法(士)に関するアンケート調査を行い、そ
れを基にミニ研修会を実施した。
2.初めてPTを受ける際に御両親が望まれるのは。
(1)わかりやすく専門的意見を交えて説明できる、 (2) 日常生活にそったアドバイスができる、(3) 各々の御両親に応じて将来像を説明できる、(4) 同じような障害を持つ子どもの親の会の情報を紹介できる、小児理学療法士である。
3.スタッフ間のコミュニケーションの向上に対して施設全体で取り組む必要がある。
4.御両親や御本人の身体的・精神的負担から地域や在宅での理学療法サービスが求められている。
5.「PTのためのPT」ではなく、生活の幅を広げる理学療法士であるために、サービス利用者の声に耳を傾けるべきである。

参考文献

1)空知恵巨ら:障害児の母親の「障害受容と告知」の実態について.北海道理学療法士会,14巻:67-72,1997.
2)広瀬たい子,上田礼子:脳性麻痺児(者)に対する母親の受容過程について.小児保健研究,48(5):545-551,1989.
3)広瀬たい子,上田礼子:脳性麻痺児(者)に対する父親の受容過程について.小児保健研究,5(4):489-494,1991.
4)Miller,L.G.:Toward a greater understanding of the parents of the mentally retarded child.J.Pediat.,73(5):699-705,1968.

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